■並行輸入について聞いてみよう!

  ←ユニオン・デ・ファブリカン所長

Q1: ブランド品の並行輸入ってよく聞くけど何のことですか?値段もいろいろ違うし、たまに日本未発売なんていうものもありますが、商品は基本的にブランドの直営店で売っているものと同じものですか?

A:日本の消費者の手に商品が渡るまでの流通ルートは、二通りのルートが存在しています。まず、一般に「代理店ルート」いわれるもので、海外ブランドと日本でブランド商品を扱う権利を持った正規代理店等の間を商品が流通するルート。要するに直営ブティックで売られているような商品です。もう一つは、それに「並行」して代理店ルートを介さない「並行輸入」ルート。つまり、ブランドの商標に関して使用の許可がない人たちが、独自で海外のショップなどから買い付けて輸入する行為のことです。(より厳密な説明は「並行輸入とはなんだろうか?」を参照)

Q2:では、私が海外で直接ブランドのバッグをたくさん買ってきて、日本で販売するのは、「並行輸入」ってことですか?

A:そういうことになります。為替の変動によって時期を選んで輸入したりすれば、安く商品を手に入れて、他の人よりも安く提供できたりしますし、日本で販売していないような海外限定品だって扱える。代理店では商品の価格が全国一律に決まっていますから、価格競争がある方が、より消費者にも魅力的ですよね。そういうわけで、お店によって多少の価格差も存在するわけです。ただ、言うまでもありませんが、商品自体は出所が同じ。だから、商品は、ブランドで販売しているのと全く同一のものであるはずです。

 Q3:ところで並行輸入は違法なのですか?

A: 並行輸入自体は違法ではありません。基本的には、1.合法的に輸入され、2.真正品であること(=商品の品質が同一であること)3.海外と日本の商標権者が経済的・法律的に密接な関係があり、同一とみなされること(=例えば、グループ会社であったり、親会社・子会社の関係にあること)、この3点が満たされる限り日本では問題はありません。「日本では」というのは、海外では、並行輸入が認められていない国も多いからです。ただ、この解釈に至るまでには、いろいろとトラブルが発生してきて、未だに法律だけでは解決しきれないごたごたもあるようです。(法的な根拠やその経緯については、「並行輸入は違法なの?」を参照。)例えば、関税の申告をごまかして得をしようとする者や、並行輸入と称した偽造品の密輸を行う者など、さまざまな方法で法の網の目をかいくぐって並行輸入のシステムを悪用する人たちがいるからです。

 Q: それは許せないですね。違法じゃないですか!

A:もちろん、こういった行為は、関税法違反にもあたります。麻薬や拳銃と同様、偽造品は見つかればもちろん税関で没収されるし、税金の過少申告についても、しかるべき処分も受けるはずです。問題は、税関では、物理的にすべての人・すべての商品を一つ一つ検品することが不可能で、実際には、検査を受けぬまま通関してしまうものがあり得るということです。

Q: 知りませんでした!確かに全部いちいち検査されたら、飛行機が到着するたびに長蛇の列ができますね。ところで、最近ブランドショップなどで「正式に通関したものですから安心です」とか「通関証明があります」とかいう表示をみかけることがありますが、それはどうとらえたら良いのでしょう?

A:そういう風に言われると、「本物だから大丈夫」だと信じてしまいそうですよね。でも、そこが巧妙な落とし穴。「通関証明」は、単に輸入者が関税を支払ったという証明です。商品が本物であるという保証ではありません。正式に通関した本物もあるし、正式に通関してしまった偽物もあるのです。惑わされてはいけません。

Q4:それでは、並行輸入をするのに資格がいるのでしょうか?

A:もっと恐ろしいことに、輸入者の知識レベルもさまざま。現在のところ資格も特にありません。老舗の業者から素人まで、いろんな人が並行輸入に関わる可能性があります。単発のアルバイト募集で、商品や法的な知識がほとんどない人が、事情を知らされないままに空港で商品を引き受け、偽造品の密輸をして税関で止められたケースだって多々あります。本当に悪質な人たちは、自分で手を染めるようなことはせず、存在すら表にも出てこないわけです。そして偽造品の質もさまざま。明らかにコピー品と分かるような粗悪な物もあれば、あまりにも巧妙な偽造品で、輸入者すら自分の輸入した商品が偽造品である事実を知らないこともあるのです。
ここでは、並行輸入と称して扱われている偽造品の問題について議論するので、あからさまな粗悪品については触れないとして、一見して判別の難しい偽造品に絞って考えたいと思います。

Q:一見してわからない偽造品なんて、消費者としては、一体何を信じて、どこで買ったら安心なのか分からないですね。

A:あらゆるトラブルを回避するなら、もっとも簡単な方法としては、多少高くても保険と思って直営店で買うことです。ただ、住まいの近くに直営店がない、予算に限りがあるなど、消費者によっていろいろ事情も動機も違う。とにかく、賢い消費者になって、信頼できるお店を探して、悪質な業者を見破ることが一番でしょうね。

Q5:免税店だったら、大丈夫ですか?

A: よく質問されるのですが、海外の「免税店」と言っても、実はいろいろな形態があります。正規の代理店と契約を結んでいる免税店もあれば、単に「免税がきく」という意味での免税店もある。ブランドとの契約があるお店であれば、商品は間違いなく本物であるといえますから、購入する前に正規の代理店かどうかを確認すれば良いことです。「免税店」であっても「正規代理店」ではない場合もあります。その場合には、並行輸入と称した偽造品が紛れ込んでいる可能性も否定できませんので、よく商品を確認してから、購入してください。

Q:話を「並行輸入」に戻しますが、 さきほどQ3で出てきた3つの条件が満たされない「違法な並行輸入」には、どのようなものがありますか?

A:「違法な並行輸入」という言葉は正確には使わないんです。例えば、偽造品は「輸入禁制品」であって並行輸入することはできません。それは、「商標権を侵害する輸入」が並行輸入と称して行われているということです。それでは、「商標権を侵害する輸入」とはどんな場合をいうのかというと、輸入する商品が、品質等から明らかに偽造品であったり、製造や販売段階での契約違反が行われていた商品であったり、どこかで権利を不正に使用するような違法な行為が絡んでいないかどうかということです。いろんなケースがありますので、順に追っていくことにしましょう。(まず、「違法な並行輸入とはどういうもの?」5つのポイントを参照!)

Q6:「偽造品」という言葉、簡単に使っていますが、正確には何を意味するのかよく分からないのですが?

A:そうですね、「ニセモノ」、「フェイク」、「コピー品」、「レプリカ」、「バッタもの」いろいろ通称もありますよね。「偽造品」とは「登録商標や著名ブランドのマークなどを不正に使用し製造された偽の商品」のこと・・・といえばよいでしょうか。ブランド品などに関わる商標権の範囲で言えば「商標権を侵害した物品」つまり、ブランドの権利者が、日本の特許庁に商標登録をした商標を、使用に関して権限のない者が無断で使用した商品のことだったり、著名ブランドのマークを勝手に使って作った商品のことをいいます。

Q7:「権限」ってどんな権利があるのですか?

A:おおざっぱにいうと、「商標権」の中には「製造権」「販売権」があって、これを分けて考えます。ところで「知的財産権」って言葉聞いたことありませんか?「商標権」とは、その知的財産権の一部に属します。権利は、企業にとって大きな財産なのです。ですから状況に応じて、ある会社には「製造権」を与え、またある会社には、「販売権」のみを与える。また別の場合には「製造権」と「販売権」の両方の権利を与える。そんな形で使い分けるんです。

Q8:なんだかややこしい話ですね。要するに製造権も販売権もない私の場合は、勝手にブランドのロゴ入りの製品を作って売ったら、偽造品の販売だということですね。では、並行輸入の業者が販売する場合、権利はどうなんでしょう?

A:並行輸入自体は、さっきも話したとおり、合法的な仕入れをし、商品が真正品である限り、国内で禁止されていません。海外では、「販売権」と「製造権」が厳密で、例えばヨーロッパなどでは、正規店以外のお店でブランド品を扱うところはわずかです。おみやげ屋のようなところで、多少扱っているような事がありますが、それもきちんと「販売許可」を受けたところしか販売できません。許可がなければ違法行為だからです。ですから、販売許諾を受けている海外の店舗で購入してくるのは、個人使用が目的でも、商売が目的でも同じように合法的な行為といえます。
ただ、残念なことに、並行輸入と称して販売される偽造品の世界では、そんな単純な話だけでは収まりません。例えば、海外で「製造権」または「販売権」のどちらかの権利しか持たない者が、まったく権限もないような第三者に作らせた商品は偽造品(=つまり商標権侵害物品)を販売していたとして、それを購入して輸入したら侵害行為にあたります。

Q:つまり、そういった商品は、いくら税関を通関したといっても、商標権侵害物品だということですね。(詳細は、「違法な並行輸入とはどういうもの?」の説明「1」〜「3」を参照)

A:そうです。先ほど述べた通りです。このようなケースについては、既に判決が出ています。(詳細の注5:大阪高裁平成13年(う)第876号の判決を参照)

Q9: 前に「特別なルートで工場から直接大量に買ってきましたので、安く販売できます。」とかいうコメントをインターネットで見たことがありますが、それはどうでしょうか?

A:いわゆる「工場からの横流し品」という類の商品ですね。衣料品で「製造」の許諾を多数の国に与えてしまったブランドでは、そのようなトラブルが多いようですし、一部バッグを扱うブランドでも似たような例が濫用されているようですね。すでに、商標権侵害物品ということで、法的な判決も出ています。(「違法な並行輸入とはどういうもの?」の説明「4」を参照)「製造権」しか持たない工場が、販売をした場合には、販売された商品は、商標権侵害物品なのです。

Q10:でもこの場合、商品は製造許可を受けた工場が作っている訳だから、品質は同じではないのですか?品質が同じものであれば、消費者には違いがわかりませんよね?どういうことでしょうか。

A:例えば、工場のように「製造権」しか持っていない者が製造した商品は、まだ一般の消費流通の流れにのっていない商品ですが、「商標権」は消滅していません。その段階で、権利者に無断で販売した場合、もう一つの権利である「販売権」を権利者に無断で使用したことになります。だから商標権侵害物品であることに変わりはないのです。権利者としては、工場で製造された製品を自分のところで検品し、権利者として満足の行く商品だけを流通経路に乗せたい、責任が持てる商品だけを消費者の元に届けたいと考えています。すると、検品されていない商品は、不良品など品質等に不安や問題がある商品が含まれているということになりませんか?そうなると、商品は同じであっても、並行輸入で求められている条件のうち真正品であること(商品が同一であること)という条件が満たされないわけです。

Q:なるほど。よく分かりました。しかし、これでは消費者には、判別がつきませんね。

A:実は、もっとややこしい話がまだあるんですよ!「製造・販売」の権利を受けた者の行為であっても偽造品と判断されることがあるんです。

Q:それは、どういう意味でしょう?

A:製造権・販売権というのは、権利者との契約の上に成り立っています。ですからその契約内容に違反した行為があった場合には、侵害行為にあたるわけです。細かくいえば、扱う商品の種類、契約の期間、製造する数量、製造地域の指定、製造前に見本や図面を提出して事前の許可を得る、といった契約の基本的な内容に関しては、必ず守らなければなりません。ところが中には曖昧にして利益を得ようとする人間がいて、トラブルを巻き起こすのです。例えば、「A」というブランドのバッグを製造する許可を得たところが、時計まで勝手に製造してしまうとか、Tシャツの製造に関する契約期間が2002年までなのに、2003年も継続して商品を製造して販売していたりとか。また、製造地域の指定があるのに、その地域外で製造した場合に関しては、フレッド・ペリー判決で違法とされています。(詳細は「違法な並行輸入とはどういうもの?」の説明「5」を参照)

Q: あまりに高度な偽造品で、そうなると輸入する業者がしっかり見極めをして購入してもらいたいですよね。

A:そうです、そこがまさに問題なのです。消費者はもちろんのこと、輸入者にとっても確認は大変な作業です。

Q:では、輸入者には、責任がないといえるのですか?消費者は泣き寝入りですか?

A: とんでもない!! 偽造書類などで日本人業者をだまそうとする海外の業者もいますから、確認には手間が掛かりますが、どんなに確認がしづらくても、輸入者には確認の義務があります。確認しようとする努力の度合いによっては、責任・・・処罰の軽減をされることがあっても、違法な商品が消費者に届いてしまうことは許せませんよね。

Q11:ちなみに、そういう被害にあった場合には、返金に応じてもらえるのでしょうか?

A: 最高裁の判決(注6および詳細を参照)により、商標権の侵害物品の販売は公序良俗に反する行為であり、販売契約そのものが無効とされています。偽造品を購入してしまった人は、その代金を支払う必要もないし、支払った代金は返金してもらえます。ただ、交渉にしても何にしても面倒な事が多々発生しますので、できれば今までのQ&Aをよく理解して違法な商品には関わらないようにくれぐれもご注意下さいね。

 上級編!「並行輸入について(商標編)」もう一度確認してみよう!

 1.「並行輸入とはなんだろうか?」
 2. 「並行輸入は違法なの?」
 3. 「違法な並行輸入とはどういうもの?」


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