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海外の正規店で購入した商品でも、国内では販売できないものがあります。
なぜ海外コンバースが輸入・販売できないのか?
海外コンバースとは、日本のコンバースが製造・販売したものではなく、日本以外で販売されたものを指します。
平成22年4月27日言渡しの 知的財産高等裁判所の判決(平成21年(ネ)第10058号)に沿って、「日本の国内権利者と米国権利者はつながりがない、日本国内の権利は日本の国内権利者が持っている、従って米国権利者が製造・販売したものは日本国内で販売できない」とのことになります。
この結論に至る理由を理解するためには次のことを知る必要があります。
尚、下記の説明は、上記の結論を理解して頂くために商標のもつ機能や法律の原則を一般的に説明するもので、コンバースの国内権利者と一切関わりなくユニオン・デ・ファブリカンが独自におこなうものです。
商標について
A)商標の機能
商標の機能としては、以下の四つが挙げられます。
- 自他商品・役務識別機能
- 出所表示機能
- 品質保証機能
- 広告・宣伝的機能
「自他商品・役務識別機能」とは、自己の商品/サービスと他人の商品/サービスを区別する働きを指し、他の三つの機能の土台となります。
「出所表示機能」とは、市場で例えば消費者に対して「どこのだれが作ったのか」を知らせる働きを指し、
「品質保証機能」とは、市場で例えば消費者をして「同一商標が付された商品・役務は同一の品質であるという期待」を抱かせる働きを指します。
要するに、他の商品と区別させ、誰が製造したのかを、誰が品質などの責任を持っているのかを消費者に知らせるために商標は存在すると言うことになります。
B)商標の属地主義
法律の適用範囲や効力範囲は、一定の領域内ごと、例えば一つの国ごとにのみ及ぶという考え方を「属地主義」と呼びます。
簡単に言えば、日本国の法律は日本国内のみ有効であり他の国では日本の法律は効力がないと言うことです。
商標に関しては、日本国の商標法に基づき登録された商標権は日本国内のみ有効であるという事になります。日本以外のX国の法律に基づいて発生した商標権はX国の国内のみで有効になります。
C)並行輸入
上記の「A)」と「B)」を理解すると、あるブランド「○○○」の事例で考えると、○○○のX国権利者と日本国の○○○権利者が同一であるか同一に等しくなくてはならない、そうでないと、日本国内に流入したX国の○○○の商品は、日本の国内権利者から品質のコントロールされていない、日本の国内権利者が有しているブランドコンセプトが反映されていない商品が流通してしまう、消費者が商品に対する責任を問うべき相手が誰だか消費者にとって判然としなくなる等々の問題が発生します。
最高裁判所は、並行輸入の違法性が阻却される一つの要件として「外国における商標権者と我が国の商標権者が同一であるか又は法律的もしくは経済的に同一人と同視し得るような関係にある事」を求めています。(最高裁判所平成15年2月27日第1小法廷判決、フレッドペリー事件判決)
D)コンバース国内権利者と米国コンバース社との関係
コンバースの権利等についての沿革は、以下の通りになります。
1964年 旧米国コンバース社が日本で靴を販売開始
1981年 月星化成がライセンスを受けて国内で製造販売
1999年 現国内権利者が靴以外の商品の商標権を譲受け
2001年 旧米国コンバース社が倒産
同年 新米国コンバース社が旧米国コンバース社から靴の商標権を取得し、現国内権利者に譲渡
2003年 米国ナイキ社が新米国コンバース社を買収
コンバースの場合、日本の国内権利者とアメリカ合衆国権利者が、同一もしくは同一と考えられる関係にあるのか、もっと具体的には、相互若しくは一方的であるにしてもそれぞれの製造する製品の品質をコントロールできる立場にあるのかが問題となりました。
前出の裁判ではこの点について、裁判所は、結論として、日本の国内権利者とアメリカ合衆国権利者は「同一もしくは同一と考えられる関係にない」としています。
日本の国内権利者は、日本工業規格を充足させる且つ取引先の要望を満たすなどの理由からかアメリカ合衆国権利者よりも厳しい基準を設け、アメリカ合衆国権利者では定めていない基準を設けるなどして製品を製造しており、アメリカ合衆国権利者は独自の基準での製造をしているなどのことも判決では述べられています。当然、品質面でアメリカ合衆国権利者の製品が日本の国内権利者のコントロール下にはないと考えるべきです。従って、日本の国内権利者は自らが品質の保証ができない製品が市場に流通している、自らの商標の品質保証機能が害されていると解されるというのが結論です。
即ち、「米国製コンバースを輸入・販売する行為は商標権を侵害するにあたる」と言うことになります。
よくいただく質問
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コンバースの服に関しても同じですか?
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コンバースについては、権利関係については服と靴でほぼ同じですから、日本の権利者が製造・販売した物品でなければ日本国内で輸入・販売できません。
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どの国で製造した物品が販売可能でどの国で製造した物品が販売不可ですか?
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どの国で製造したかは問題ではありません。日本の権利者が製造・販売した物品かが問題で、日本の権利者以外が製造・販売した物品は日本では輸入・販売できません。
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販売可能な物品と販売不可の物品との見分け方を教えて下さい。
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守秘義務が課せられている関係(一般に偽造品と真正品との見分け方を公表しますとより精巧な偽造品を誘発するとの観点から公開をしないのが普通です)から全てを開示することはできませんが、以下の事は開示可能です。
以下の物品については販売が可能です。
靴の箱に添付されているシール右上に「JPN」が印字のあるもの 靴のタン(ベロ)部分裏のラベル右下に「JPN」の印字があるもの
なぜオーストリアのUGGが輸入・販売できないのか?
「UGGブーツ」とは「ムートンブーツ」との意味です。
でも、オーストラリアを除いて日本を含む大多数の国々では、DECKERS社の「UGG」のみが輸入販売できます。
例えば、日本においてはDECKERS社が「UGG」を商標登録しており、同社以外は「UGG」の標章を付した物品を製造・販売できないからです。
まず、コンバースの項の商標についてA)からC)までの説明を読んで下さい。
その上で「UGG」固有の事項を説明すると、日本国内では「UGG」と付されている物品についての品質保証等の責任は、DECKERS社が持っており、同社が製造・販売に関わっていない物品の責任は持ちようがないからということになります。
「UGG」と付されているものでDECKERS社でない物品を購入した消費者は、物品に何かあった場合、オーストラリアで製造した方に連絡を取らなくてはならなくなりますし、オーストラリアで製造した方は、日本の工業規格等について承知していないし、そもそも日本語での対応もできない可能性が高いと考えられ、消費者にとっては望ましい状況ではありません。そもそも、消費者は、日本で購入した場合で物品の上に「UGG」と付されていたら、DECKERS社のものと思い込んで混乱をしてしまいます。DECKERS社のものではないと説明して販売することもできません。そのような事が許されたら、説明をすればどういう商標が付されていても販売しても良いとの理屈になってしまい、極論ですが、偽造品と説明すれば偽造品の販売をしても構わないとのことになってしまいます。